マンション管理費の滞納がある場合、管理組合は滞納している区分所有者の区分所有権を競売にかけることができます(区分所有法7条)。
通常、不動産の競売は、当事者間の契約で抵当権等を設定している場合や、又は判決を取って判決に基づく強制執行を申し立てる場合などでないとできませんが、法律がいくつかの場合については、債権を保全するために当然に競売の申立てができるようにしている場合があります。これを先取特権といいます。
区分所有法7条は、マンション管理費等の債権について、滞納者である区分所有者の区分所有権(及び建物に備え付けた動産)に対する先取特権を認めたものです。したがって、管理組合は、区分所有者との契約も訴訟提起も経ることなく、滞納者の区分所有権を競売にかけるよう申し立てることができます。
このように区分所有権に対する先取特権は、管理費回収のために有効な手段ですが、ネックとなる点もあります。
まず、管理費を滞納する区分所有者の多くは、住宅ローンを抱えており、区分所有権には住宅ローン債権者が抵当権を設定しています。区分所有法7条の先取特権は、登記された抵当権には負けます(民法336条)。つまり、競売による代金から抵当権者が先に回収することになります。そして、そもそも住宅ローンの残額が区分所有権の価値を上回り、競売を実施しても申立人である管理組合に配当が無い見込みの場合には、競売の開始決定が取り消されてしまいます(民事執行法63条2項)。
また、訴訟を経ませんので、滞納管理費について全て書面で立証する必要があるため、管理費が数次にわたり改訂されていたりすると、煩雑な作業を要する場合があります。
さらに、原則として動産執行を先行させる必要があること(区分所有法7条2項、民法335条1項)も、少々面倒な点です。