専有部分を賃貸している区分所有者が「水道は入居者である賃借人が使っているのだから賃借人に請求せよ」と主張して,水道料金を支払わないケースがあります。
この点,区分所有者に対して水道料金の支払義務を課した規約の規定があれば,管理組合がそのような規約の規定を有効に定めることができるのか,という問題になります。規約の規定があり,それが有効であるなら,「規約に基づいて請求可能」というだけのことです。
では,規約にその旨の規定がない場合にはどうでしょうか。
私は,区分所有者に請求できると考えます。法律上の根拠としては事務管理(民法697条)が考えられます。
すなわち,管理組合が給水にかかる事務を行うのは,給水が確保されなければ区分所有者らにとって専有部分の使用収益ができなくなってしまうからに他なりません。管理組合は給水にかかる事務を区分所有者らの事務として行っているものといえます。したがって,事務管理費用の償還請求として水道料金の請求ができます。
このような見解を採用して区分所有者に対する水道料金の請求を認めた裁判例も存在します(大阪地裁平成20年9月19日判決(平成20年(レ)第6号)判例集未掲載)。
ただし,紛争を防ぐためには,区分所有者の負担である旨規約に明記した方がよいでしょう。