給水契約がマンション全体で一括の契約となっており,管理組合が水道局に水道料金を支払い,各区分所有者に対し,専有部分で使用した量に応じて請求し,回収しており,かつ管理規約には専有部分の水道料金は区分所有者が負担する旨定められているマンションの場合,できると考えます。
近時,請求を認める裁判例が複数出ています(大阪高裁判決平成20年4月16日判例タイムズ1267号289頁,大阪地裁判決平成21年7月14日判例タイムズ1328号120頁)。
この点,できないとする見解が従来はむしろ有力であったようです。
その理由としては,水道料金は,「立替金の求償権」だから「共有財産の維持管理に要する費用とはいえ」ない,というのです(山上知裕編著『Q&Aマンション法ハンドブック』165頁)。
しかし,管理組合が水道局と一括の給水契約をしている場合,管理組合が水道局に対して支払いをするのは自己の債務の履行であって何ら「立替」をしているわけではありません。その費用を使用量に応じて区分所有者が負担するものと管理規約で定めたときに,その債権がどうして(区分所有法8条により特定承継人に請求できるものとされている)規約に基づく債権にあたらないのでしょうか。
あたらない,というためには,水道料金の負担を定めた規約の規定は,管理組合が本来扱うことの出来ない事項を定めたものであるなどの理由で無効だという必要があるでしょう。しかし,自治体が共同住宅における給水を原則として共同住宅全体に対して行うものとし,かつ戸別計量・戸別収納への変更に厳しい制約がある場合に,管理組合が水道料金の支払い・徴収の事務を止めてしまえば,マンションにおける共同生活は成り立ちません。少なくともそのような自治体のもとでは,かかる事務が管理組合の扱い得ない事項だとは到底いえないでしょう。