たとえば,共用部分の使用方法(店舗が看板を掲示できる箇所等)に関する管理規約の規定が分譲時の重要事項説明書の記載と食い違っていて,どちらに基づいて運用されるべきかが争われるといったケースがあります。
そのような場合,管理規約の規定に基づいて運用するのが正しいといえます。
共用部分の使用方法のような区分所有建物の管理に関する事項について規律する法律は区分所有法ですが,同法は,その詳細について区分所有者の団体(管理組合)が規約で規定することを認めています。すなわち,区分所有法30条1項は,「建物及びその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」について「規約で定めることができる」としています。
したがって,管理規約は,それが有効に成立しているものであれば,個人的にその内容に同意したことがあるか否かに関わらず,全ての区分所有者に適用されます。裁判でも通用する法的な規範(ルール)なのです。
これに対し,重要事項説明書は,分譲時の売買契約という売主・買主間の関係で契約内容を当事者が正しく理解できるように,宅地建物取引業者から交付されるものであり,2当事者間の契約に関する書面に過ぎません。共用部分の使用のルールという区分所有者全員に関係する事項について,2当事者間の書面が規範としての効力を有するものではありません。
重要事項説明書の記載に従った運用がなされないことにより不利益を被る区分所有者があるとすれば,錯誤による売買契約の無効の主張や誤った重要事項説明を行った宅建業者に対する損害賠償請求により救済を求めるべきことになります。