滞納されているマンション管理費回収の手段の1つに滞納者の区分所有権の競売がありますが,この点,判決に基づく一般的な競売(強制競売)と区分所有法59条に基づく競売(59条競売)とを混同されていることがあります。
マンション管理会社の社員と話していても,たとえば強制競売を行うのに,総会の特別決議が必要であるとの誤解や,逆に59条競売について総会の特別決議があれば,ただちに裁判所に競売の申立ができる,といった誤解に接したことがあります。
59条競売は,区分所有者の共同の利益に反する行為を除去する手段として,当該行為者を区分所有関係から排除するという究極の手段を区分所有法が特 別に認めたものです。したがって,その重大性に鑑みて,総会で特別決議をすることや,その際,相手方に弁明の機会を与えることが手続上の要件として求めら れています。しかも,特別決議をしたからといって直ちに裁判所に競売そのものの申立ができるわけではありません。裁判所に対し,競売を命じる判決を求めて 訴えを提起することを要します。裁判所が区分所有法59条の要件を満たしていることを認め,競売を命じた判決を下した場合に,その判決に基づいて初めて競 売を申し立てることが可能となります。
これに対し,強制競売も確かに競売が奏功すれば,当該区分所有者が区分所有関係から排除されることに はなるのですが,それは金銭債権の実現のために一般的に認められる強制執行の一手段に過ぎません。したがって,総会の特別決議が要件とされてはいません。 標準管理規約では,「未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴訟その他法的措置の追行」が理事会の議決事項とされていますから(54条),標準管理規約 に準拠した規約を有する管理組合では,理事会決議で足りることになります。