住宅宿泊事業法(以下、「民泊新法」といいます。)に基づく住宅宿泊事業の届出の受付開始が迫り、その対応がマンション管理組合の喫緊の課題となっています(同法の施行は本年-平成30年-6月15日ですが、届出の受付開始は本年3月15日です。)。
国土交通省は、規約に民泊を禁止するか否かを明示する規定を持たないマンションであっても、総会決議又は理事会決議で民泊を禁止する方針が決定されている場合には、届出を受理しない旨のアナウンスをしています。したがって、マンション内で民泊新法に基づく民泊が実施されることを回避するためには、少なくとも理事会決議で民泊を禁止する方針を決定しておく必要があります。
では、理事会決議さえしておけば、規約を整備しなくとも問題は無いのでしょうか。
この点、多くのマンションの規約では、従前の標準管理規約に準拠して「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」という条項ないしこれに準じる条項を設けています。これらの条項が民泊を禁止する趣旨を包含していると解釈できるのだとすれば、理事会決議あるいはせいぜい総会決議で解釈を明確にしておけば充分というべきでしょう。
しかしながら、そのような解釈は当然には採ることが出来ません。
民泊新法に基づく民泊は、年間180日を上限として「人の居住の用に供されている」「住宅」に「人を宿泊させる事業」(同法2条3項)という建て付けになっていることからすれば、これに利用する行為も「住宅として使用」する範囲を逸脱するものとは断定し難いからです。
また、従前の規約が制定された当時、民泊新法はなかったことに照らし、民泊新法に基づく民泊を念頭に置き、これを除外する趣旨で「住宅として使用」と規定したと見ることには無理があります。
したがって、将来生じうるトラブルを可及的に回避するためには、(3月15日に間に合わせるためにひとまず理事会決議等に頼ることはやむを得ないとしても)規約を改正し、民泊新法に基づく民泊について(特区民泊が可能な地域では特区民泊についても)、これを禁止するか否かを明記することが望ましいといえます。